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平成15年度知っておきたい主な事業 特別編

開業まで1年を切った「あおなみ線」(西名古屋港線)から(後編)

前回2月号に引き続き、開業まで残り7ヶ月と迫った「あおなみ線」の今を追った。今回は、工事の現場、特に臨港地区周辺の現場を訪ね、現時点での進捗状況を見せてもらった。完成も間近なこの時期、各種施設が整い始め、いよいよその全容が見えてきた。

コスト削減と安全性確保

前回でも紹介したように、「あおなみ線」は開業時の需要予測を下方修正し、初期投資や運営にかかる費用を削減する計画を実行中だ。ただ、コスト削減が課題とは言え、安全性の高い鉄道を造ることが最優先とされる鉄道整備事業。各コスト削減策も、充分な安全確保がされて初めて意味を持つ。

今回のコスト削減策の中で、運転手と車掌によるツーマン方式は運転手だけのワンマン方式に切り替えられた。これを補う形で、可動式ホーム柵・ホームドアは安全性に配慮し、全線で取り付けられた。ホーム上に設けられた柵と乗降場所に設けられた扉で構成され、扉は電車のドアとほぼ連動して開閉する仕組みになっている。新幹線ホームや上飯田連絡線などでも見かけるが、各駅にて取り付けられる鉄軌道方式とは中部地区で初だという。

また、扉の外側には「居残りセンサー」というものもついている。これは扉と電車の間に、子供などが閉じ込められてしまったときなどに、自動で開くような工夫がされ、乗降の安全に、2重、3重の対策がとられている。

野跡駅の可動式ホーム柵
金城ふ頭駅以外で採用される可動式ホーム柵
(写真は野跡駅)
金城ふ頭駅の可動式ホームドア
金城ふ頭駅だけは可動式ホーム柵をフルスクリーン化して、可動式ホームドアとなっている
CTCとATS−あおなみ線の集中管理機能と自動列車停止装置
稲永ビル(CTC)
稲永駅の左側にある稲永ビル(CTC)。

それぞれの列車の進行状況は、稲永駅の横にある稲永ビルのCTC(centralized traffic control)の指令室で把握される。この部屋には全線路図を示す大きな電光掲示板があり、一目で電車の位置がわかるようになっている。これによって、電車の運行状況を監視・把握し、無線通信などで全指令を行なう。

線路上には、ところどころに小さな箱状の機器が見受けられる。これは電車を緊急停止させることができるATS(automatic train stop)装置だ。この上を、前の信号が赤の状態で電車が通過した場合に、制動装置が働き、自動で車両を停止させる。終点の金城ふ頭駅の線路上には、特にこのATS装置が多く見かけられるが、これはATSに速度照査機能を持たせたもので、万が一、所定の速度で電車が進入した場合、車止めにぶつかる前に車両をストップさせるためだ。終点駅ならではの光景でもある。
指令室の電光掲示板
指令室の電光掲示板。
ATS装置
ATS装置
金城ふ頭駅のATSと車止め 1500ボルトが流れる架線
変電所で1500ボルトに変圧された電圧が、各架線を流れる
金城ふ頭駅のATSと車止め。
環境への配慮

また、「あおなみ線」は環境にも十分配慮した設計となっている。新しく鉄道ができると一番気になるのが騒音問題かもしれない。「あおなみ線」は、もともと西名古屋港線という単線の貨物路線を旅客線化したものだが、すぐ近くには民家がある。そのため周辺住民への騒音と振動に配慮した工夫は欠かせない。

まず一つは1.5mの高い防音壁を高架部に設けていることだ。稲永駅など特に民家が隣接している区間では、防音壁にさらに吸音パネルが付いている。

二つ目に、線路は継ぎ目を少なくしたロングレールを採用していることだ。普通、レールは25メートル間隔になっていて、この切れ目で「ガタンゴトン」という電車の音が鳴る。それを、技術的に可能な直線箇所では、溶接してつなぐことによって、騒音の少ないスムーズな運転を図っている。あの「ガタンゴトン」という音も、この「あおなみ線」ではあまり聞くことができないかもしれない。

三つ目は、高架化された線路区間の長さだ。南荒子駅の南側から金城ふ頭駅まで、「あおなみ線」全体の大半を高架でつないだことにより、騒音が軽減される。また、踏切が一つもない路線ができあがったことで、開通後踏切を原因とした渋滞の心配もなくなった。

高架は景観にも配慮されている。高架の側面には「みなと」「あおなみ」のイメージで、青の2本線が一直線に流れている。堅いコンクリートの構造物にも柔らかなやさしい印象を与えるために、コンクリートの角を取って張りを丸くするなど、曲面を用いたデザインが用いられ圧迫感を軽減している。
吸音パネル付の防音壁
稲永駅にある吸音パネル付の防音壁
ロングレール
継ぎ目も見えないくらいきれいに溶接されたロングレール
高架
青い線と曲面を用いてデザインされた高架
潮凪の車庫
稲永の分岐から下っていくと現れる潮凪の車庫
検修庫内
検修庫には、下にもぐって修理できるようなピットが造られている
保守用車両
保守用車両。非常時でも対応できるようディーゼルエンジンで走る。
潮凪車庫の洗車機
潮凪車庫の洗車機。ここで全車輌がきれいになる。
潮凪車庫と車両デビュー

11駅を延長15.2kmの線路でつなぐが、その途中、稲永駅と野跡駅の間で分岐によって高架から地上に降りる箇所がある。ここが潮凪の車庫だ。

「あおなみ線」には4両8編成の車輌があるが、夜になるとここの留置線が車両のベッドになる。この奥にある検修庫の中には車修理工場などでよく見られるピットがあり、全車両とも簡易な点検や修理などはここで行なわれる。

車両は、現在、豊川の日本車輌(株)で製造中だ。電車の軌道の幅は日本に二種類あるというが、車輌完成後には、「あおなみ線」の規格幅と同じ1067mmのJR線路(新幹線は1435mm)を使って”オンレール”で運ばれてくる。4月以降の予定という。このときには、貨物扱いで、当然、自走はしないが、潮凪の車庫で整備された後、順次試運転等が行われる。開業前だが、もうすぐこの線路を走る電車を見かけることができるだろう。

金城ふ頭駅
金城ふ頭駅。車内からは港らしい景色が楽しめそう
金城ふ頭開発事業

駅や線路といった鉄道施設のほか、その周辺の開発も進んでいる。特に、金城ふ頭駅周辺の開発計画は他のメディアでもとりあげられ、注目度も高い。そこには三つのポイントがある。

金城ふ頭周辺イメージパース一つ目は、駅前広場ロータリーやポートメッセにつながる歩道橋といった公共の施設だ。これは10月の開業時期を目指して工事が進んでいる。

二つ目は、民間からのノウハウを最大限に活かした商業・娯楽施設の導入計画だ。港湾関係者など限られた人間にとっての特殊な物流拠点から、広域交通の利便性を活かした国際性豊かな交流拠点へ展開していく予定だ。

この他、中央緑地の野外コンサートに関する計画も、現在、調査・検討中である。

これら三つの計画実施を中心に、金城ふ頭が新たな賑わいあるウォーターフロントになることが期待されている。

こうして着々と整備の進む「あおなみ線」とその沿線地域。「あおなみ線」は、安全に配慮しながら、地域に溶け込み、地域や港の発展に欠かせない存在として、まもなくその開業を迎えようとしている。
防風スクリーンを設置した野跡駅
全線の中で唯一、強風に備えて防風スクリーンを設置した野跡駅
軌陸タイプの車を使った作業
線路ができてからは軌陸タイプの車を使って作業を進めている
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