平成22年度行政評価 外部有識者意見 行政評価の制度運用について(関西学院大学専門職大学院 経営戦略研究科 稲沢 克祐 教授)

ページ番号1001294  更新日 2017年10月18日 印刷 

施策評価の意義を踏まえ行政経営のさらなる展開に向けて

関西学院大学専門職大学院 経営戦略研究科 教授
稲沢 克祐

名古屋港管理組合では、平成21年度から施策評価を導入し22年度は導入2年度目にあたる。ここで、平成22年度の施策評価取組について、そもそも施策評価の意義はどこにあるのか、その意義から予算編成、行政改革への連動といった行政経営改革に対する意義はどのように考えられるのかを整理する。その上で、今後の展開に向けて、特に行政評価の予算編成への活用に向けた具体的方策について示す。

1 施策評価の意義

施策評価の意義は、以下の点である。第1に、施策単位で構成されている計画の進捗管理を行うこと。ここで「進捗管理」とは、単に計画における目標値と実績値とを比較することにとどまらず、目標値と実績値との乖離がある場合には、いかにして目標達成するかを検討し、施策単位でしかるべき改善案を導き出すことである。この改善案の導出が、第2の意義である施策構成事務事業の重点化・方向づけとなる。施策目的の達成は、手段である事務事業が最適化されることによって実現する。そして事務事業の最適化は、以下の2つの方向から達成される。すなわち、施策を構成する事務事業の中で、施策目的達成に対して貢献度の高い事務事業を重点化すること、および、個々の事務事業の成果の最大化・コストの最小化を図ることである。名古屋港管理組合の施策評価シートでは、「事務事業の重点化」、「事務事業の方向性」として評価をすることとなっている。

2 施策評価と予算編成・行政改革

事務事業の重点化と方向性が施策評価によって決定すると、予算編成改革と行政改革とに連動するようになる。すなわち、重点化するとされた事務事業が、その方向性として「コスト投入」を拡大して「成果」を拡充すべきという方向性であれば、予算の増額要求を支持し、一方で、重点化と相対的に反対の位置にある「抑制」と考えられた事務事業については、「成果」を維持しつつ「コスト投入」を縮小するといった効率性改革が求められるようになるかもしれない。これまでの予算編成が「成果」にあまり着目することなく行われていたのが政府・自治体の実態であったことを考えれば、施策目的(施策の成果)の達成に向けた予算配分の検討をすることになり、予算編成のあり方に変革を求めるものと言える。

さらに、効率性改革などの方向性とは、行政改革の方向性とも一致することになる。もとより、事務事業評価においても効率性改革を求めるが、施策目標の達成という上位の視点から示唆される方向性であり、これまでにない視点であろう。

3 施策評価活用の新たな展開 予算編成を例に

施策評価が予算編成と行政改革に新たな視野をもたらすとは言え、その実現には、以下の2点の実務的課題を伴うことも事実である。第一に、予算事業と評価事業とが一致していなければ、施策評価を通じて事務事業のコスト投入の方向性を導き出したとしても、予算要求へとつなげることが難しくなる。第二に、N年度(2009年度)の施策および事務事業の評価は、N+1年(2010年)6月以降に評価され、同年11月頃、N+2年度(2011年度)の予算編成に活用されるとすれば、評価情報と活用される予算編成との間が2年度となってしまう。確かに、これらは課題であるが、克服している先進自治体もあることから、今後、名古屋港管理組合にあっては、これら先進自治体の例にならい、施策評価・事務事業評価の予算編成への活用へと進めることを期待したい。

予算が単年度のものであるのに対して、計画は5年単位で記述されている。施策評価は、3年から5年といった中期的な時間軸で評価をすることが基本である。単年度の予算と施策評価との連関を考えていくことは、上述したように施策構成事務事業の重点化・方向性というアプローチで実現可能であるが、一方で、施策実現に要する時間と財源配分の時間軸を一致させられれば、さらに、計画達成に向けた実効性は高まるはずである。ここで登場すべきが、中期財政計画ということになる。計画達成に必要と考えられる財源を付加した3年から5年を単位とした中期財政計画を策定することで、施策実現が財源面から検討されるようになる。実際に、中期財政計画と3年単位の実施計画とを連動させて行政評価を活用している先進自治体もあることから、今後、名古屋港管理組合においても、計画の実現を考えた中期財政計画の策定の検討を求めたいところである。

名古屋港管理組合は、平成15年度の行政評価の試行導入から、2次評価による事務事業の改善改革の推進、さらには施策評価の導入と、一部事務組合における行政評価の取り組みの先進事例となってきた。今後は、施策評価と事務事業評価を中期・短期の行政経営により反映させていくかを検討する時期にはいっているだろう。先進がゆえの厳しさもあると思うが、是非ともさらなる展開を望みたいところである。

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